「まだ六時じゃん……」
「早く! おなかすいたよ!」
 彼に頭をこすりつけてせかされ、仕方なく起きてカリカリを出し、皿を床に置いた。
 ルナは嬉しそうにそれを食べ終えると、口の周りを舐めながら私を見た。

「はやくしっぽを探しにいこう!」
「私はまだごはん食べてないよ」
 そのあとは着替えも化粧もしないといけない。

「早く、早く!」
 せかされながら朝食を済ませ、外出の準備を整えた。
 土曜日の八時に外に出るなんて、ひとりになってから初めてだ。
 昨日はこの辺りを歩いてたはず、というルナの案内にしたがって一緒に歩く。

 猫は動体視力がいいけれど、通常の視力はあまりよくないと聞いたことがある。
 だからルナの分まで見落としのないようにきょろきょろと探して歩くが、見つからない。

「猫仲間に声をかけて探してもらうとかできないの?」
「最近は野良が少なくてできない。飼われてるのは家の中ばっかだし。烏に持ってかれてたらどうしよう」
 頭を抱えるルナ。その姿はどうしようもなくかわいい。本人が困っているのに申し訳ないけど。

「持って行かれたらどうなるの?」
「食べられちゃう。そうしたら僕、猫又ではいられない。ただの猫に戻って死ぬしかない」

 私はびっくりした。
「早く見つけないと!」
「まだしゃべれるってことは、しっぽがどこかにあるってことなんだけど……しっぽを持った動物は猫又と同じ妖力を持つから、悪い奴に拾われていないといいけどな」
「そんな危険なもの落とさないでよ」
 私が言うと、ルナはむっとした。

「好きで落としたわけじゃないもん」
「そりゃそうだろうけど」
 とにかく早く見つけないと。ルナの命がかかっている。