「落としたら二度ともらえないんだよ」
「再発行不可なんだね」
 なんだか世知辛い気がする。私はさらに聞いた。

「猫又ってどんな力があるの?」
「猫にもよるんだけど、みんな妖力を持ってるよ。人語をしゃべれるのはあたりまえ。人を襲うって怖がる人がいるけど、身を守るときしか攻撃しないよ」
「なるほど」
 猫には優しくしようと思った。猫以外にも優しくした方がいいけど。

「とにかくしっぽがあれば妖力で普通の人や猫にはできないことができるんだよ!」
 どや顔で言い張るのが見栄を張る子どもみたいでかわいい。
「とりあえず今日はおやすみ」
 彼にざぶとんを差し出して、彼のベッドにしてもらった。

 お風呂に入ってない猫と一緒に布団に入る気にはなれない。
 でもお風呂は嫌がるよね。猫を拾ったら動物病院に連れて行くものだとネットで見たことがあるけれど、猫又はどうするべきなんだろう。
 でも疲れたから、今日はこれまで。明日が土曜日で良かった。ゆっくり休めるから。



 翌日、どたばたと走り回る音で私は起きた。まだ目覚ましも鳴っていない。
「なんの騒ぎ……」
 そう思ってから、猫又を連れて帰ったことを思い出す。

「ルナ、静かにして……」
「おはよう、ごはんまだ!?」
 ルナが寄って来て顔の近くで言う。ひげが頬に当たってくすぐったい。