一緒にコンビニに行って気付いたが、彼は私以外には見えないようだった。
 彼の要望するおやつとカリカリ、猫缶を買い物かごに入れる。お会計をする間、カウンターに前足をかけてしっぽをご機嫌に震わせる彼は、かわいい以外に言葉が出てこなかった。

 自私の宅は一軒家で、独り暮らし。弟は自立して、両親は実家のある地方でふたりを始めた。アラサーで家付きになっては結婚がさらに遠くなりそうだが、結婚願望が薄いので焦ってはいない。このままひとりのほうがいいかもしれないとすら思う。

 帰ってからすぐに猫缶を皿に出して彼の前に置いた。「うみゃい、うみゃい」と鳴きながら食べた彼は、さらには液状おやつもぺろりと平らげ、自身の口のまわりをべろべろと舐めていた。食べ過ぎが気になるから、明日からはこちらが節制してあげよう。
 そう思いながら私もコンビニのご飯を食べた。

 しっぽをなくした彼は、今はしゃべれる以外は普通の猫とはかわりがないのだという。
「僕の名前はルナだよ」
 ごはんを食べて気が緩んだのか、敬語が消えていた。

「猫又なのに、名前は洋風だね」
「飼い主がつけてくれたんだ! 僕の誇り!」

「元は飼いネコだったんだね」
「もうその人も亡くなって会えないんだけど」
 彼の耳が垂れてひげもしおれる。私は慌てて話をそらした。

「猫又ってどうやってなるの?」
「死んだあと、あの世で修行するの。合格すると猫仙人から猫又の証のしっぽをつけてもらえるんだ」
「あとづけなんだ」
 しっぽがわかれるか二本目が生えるのかのどちらかだと思っていた。