しっぽをなくした猫又

「あっちでも元気でね」
「うん! ありがとう! じゃあね!」
 走り出した彼は次第に空中へ駆けあがっていく。
 それを迎えるように天から光が伸びて彼の姿は薄くなり、やがて溶けるように消えた。

「ルナもしっぽが戻って良かったね」
 言ってから、私は気が付く。
 つまり、ルナもいなくなるってことなのでは。

「そうだね。やっぱ猫又はしっぽがふたつないと」
 語尾から「にゃ」が消えている。猫又としての妖力が戻ったのだろう。
「君も、もう行っちゃう?」
「仲間が向こうで心配してるだろうから」
「じゃあ、これ持って行って」
 猫用のおやつを差し出すと、ルナは顔を輝かせた。

「いいの!?」
「私が持ってても仕方ないし」
 犬用のおやつは……今度、麻鈴ちゃんにあげよう。マロンジュニアに食べてもらうために。

「ありがとう。あなたはいい人だね。向こうに言ったらみんなに伝えておくよ」
 それ、私になんのメリットがあるんだろう。疑問に思うが、水を差すのも野暮か。

「ありがとうね。元気でね」
「うん。じゃあね!」
 ルナは前足を振って、それから元気に駆け出して行った。彼はマロンとは違って天に上ることはなく、ひょいとジャンプして、ぱっと消えた。

「あー、写真を撮らせてもらえばよかった」
 ふたりともいなくなってから気が付く。どたばたしていて、写真を撮るなんて思いもしなかった。実際、写るのかはわからないけど。

 ルナがいたのは二晩。マロンに至ってはたったの一晩だ。
 なのに、その晩は夜がやけに静かに思えた。