しっぽをなくした猫又

「マロンが成仏するとき、しっぽも一緒に成仏するんだろうか?」
「そんなの許さないにゃ!」
 ルナが焦ってマロンの後ろに回り、またしっぽを引っ張る。

「痛いってば!」
 マロンの悲鳴に、私は慌ててルナを引き離した。

「落ち着いて」
「落ち着いてられにゃいにゃ! 僕の……僕のしっぽ」

 ルナの目が潤んだと思うやいなや、はらはらと涙が零れた。耳を伏せてしおしおとヒゲを垂れさせるさまに、たまらずに頭を撫でた。それでこらえきれなくなったのか、彼は顔を伏せてさめざめと泣く。

 ルナが猫又の矜持を守りたいのもわかる。私だってもうすぐ猿になりますと言われたら平気ではいられない。そもそもしっぽは彼の大切な一部だ。
 うーん、と考えてから、マロンに言う。

「また明日、行ってみよう。マロンを覚えてないなんてことないと思う」
「行ってもきっとまた……」
「男らしくにゃいにゃ!」
 泣きながらふーっと怒るルナの言葉が気になって、私は彼を見る。
 語尾だけでなく、な行が「にゃ」になった気がする。急がないといけない。



 翌日の日曜日、私は十時くらいに家を出た。
 マロンは渋っていたが、ルナに噛みつくぞと脅されて重い腰を上げた。
 女の子……麻鈴ちゃんの家に着くと、私は緊張しつつインターホンを押した。

『はい』
「突然すみません、こちらで飼われていたわんちゃんについてお聞きしたいのですが」
 私が言うと、インターホンが沈黙した。
 不審者だと思われただろうか。だけどこれしか接触する方法が思い付かなかった。