しっぽをなくした猫又

 私は黙ってマロンを見る。ルナは気まずそうに目をそらして顔を洗っていた。
「俺のこと、もうどうでもいいんだ……」
 マロンがめそめそと泣き始める。

「会えたんだからしっぽを返すにゃ!」
 無情なルナに、マロンがさらに泣く。
「とりあえず帰ろう」
 私はルナとマロンを連れて家に帰った。



 帰宅後もマロンは落ち込んでいた。ときおり涙をぬぐい、鼻をすすっている様は人間みたいだ。
 ルナはマロンのしっぽをくわえてひっぱり、抜けない、と嘆いてから休憩していた。
 リビングのソファにでんと座るルナに、床に伏せているマロン。
 私はソファの隅に遠慮がちに座るしかなかった。

「マロンの願いをかなえないとしっぽが抜けないとか?」
 そういう可能性もあるのではないだろうか。
「迷惑な話にゃ!」
「まず、マロンがあの子に見えていたかどうか」
「きっと見えてなかったんだ!」
 マロンはわーっと泣き始める。

「人間には犬って似たような姿に見えるから、私の飼い犬だと思われたのかも」
「そう、かな」
 マロンはしゅんとうなだれている。
 見えたところで「会えた」実感などないだろう。どうしたら「会えた」と彼が実感できてルナのしっぽが戻るのだろう。