しっぽをなくした猫又

「飼い主出てこい、って念じてみるとか?」
「僕の力を使うにゃんて!」
「早く返してほしいなら貸してあげなさいよ」
 ルナはむっとした顔になった。が、仕方なさそうにマロンに言う。

「さっさとやるにゃ。早くしないとひっかくにゃ!」
「わ、わかった」
 ルナの勢いに押され、マロンは伏せの姿勢になって目をつぶる。

「出て来て、会いたいから出て来て……」
 ぶつぶつとその口からこぼれるのは願望。
 待つことしばし。
 家のドアががちゃっと開いた。

「さすが僕の妖力にゃ!」
 ルナが喜び、マロンは両目を前足でおさえる。
 ただの偶然か妖力のおかげか。
 驚いた私が見たものは。

「帰ろうか」
 私はマロンの前に立って視界を塞ぐ。

「せっかく出て来たにゃ。早く行くにゃ!」
 ルナに前足でパンチされたマロンはそーっと片目を開けて家から出て来た少女を見た。

「あー!」
 私は顔をひきつらせた。
 マロンはショックを受けて、ドアを凝視していた。

「気を付けていくのよ、麻鈴(まりん)
「はーい! ジュニア、行くよ!」
 ボブカットの女の子がチワワを連れて庭に出て来た。そのまま門をくぐって歩いて行く。
 ジュニアと呼ばれたチワワははしゃいでいるのか、跳ねるように歩いていった。