君はいつでも宝物をくれる

 皆は意味が分からないという顔をしていたけど、絵を描いているこの空間が好きだった。
 キラキラした色が降ってくる。
 あたり一面に色が溢れていた。
 亮太を見た。
 亮太もサトを見ている。
 ノートに滑らせる鉛筆やクレバスの摩擦音が心地良い。
 
 ――ああ、楽しい。
 
 子供たちの話し声が聞こえる。
「ねえ、先生、これ見て」
「サッカーボール上手に描けたよ」
「そのクレパス貸してよ」
 
 小百合は、子供たちの掛け声に答えていた。
 子供教室の窓から見える景色は、落葉樹が冬の訪れを教えてくれる。
 窓を叩く風の音や、友達と揉み合ってクレパスを机から落としてしまう賑やかな音。
 色んな声が飛び交う中、サトの隣にいた子が、小百合にそっと囁いた。
「――サト先生って、絵、上手だね」