君はいつでも宝物をくれる

「先生、こんにちはー」と大きな声で入ってきた生徒が、サトを見て固まる。
 その後、来た子供たちも、同じように固まるので笑ってしまった。
 サトの笑顔に安心した生徒が、「先生?」と聞くものだから、自分も固まってしまった。
「臨時のサト先生です。よろしくお願いします」
 小百合がそう言うと、皆で声を合わせて「よろしくお願いします」と挨拶する。
 先生の説明もそこそこに聞いて、皆はスケッチブックを出したり、クレパスを用意する。
 家で描いてきたよという絵を先生に見せたり、友達に見せたり。おしゃべりが尽きない。
 そうだ、子供教室は、こんな感じだった。
 楽しかった。
 自然と笑顔がこぼれた。
「今日は、お兄さんの絵を描いてもらいます」
 そう小百合は言うと、サトを見る。
 え? 僕? と戸惑ったのは一瞬で、次の瞬間ドアから、ユニフォーム姿で、サッカーボールを持っている亮太が入ってきた。
 日本代表ユニフォームのレプリカに身を包んでいる。
 子供たちは、「かっこいいー」「え? 本物?」「違うよ」と大騒ぎだ。
 亮太は、得意げにポーズを決めて、挨拶をした。