君はいつでも宝物をくれる

 そう言って、絵を見たまま亮太が続けた。
「嫉妬してたんだ。サトに……。」
 ――上手に描けない。かっこ悪い。誰にも見られたくない。そんな気持ちで描いた――。
 独白している横顔を見つめる。
 光っている彼の色が濁ったり、黒くなったり、濃くなったり、変化していた。
 寂しい、悲しい、怖い、恥ずかしい。そんな感情なのかと思った。
 自分が、いつも心のどこかで思っていた感情。
 亮太も自分と同じような感情を抱いていた。
「サトの絵、好きだからな。絶対描けるようになるよ」
 そう言って見つめる瞳に吸い込まれた。
 ――いつか、描ける。
 

 それから数日経って、小百合先生から連絡があった。
 日曜日の子供絵画教室の日に手伝ってほしいというものだった。
 子供教室の日は、手伝いをする先生がもう一人いるのだが、風邪で来られなくなったということだった。
 絵画教室に着くと、自分達がいつも使っている椅子やテーブルではなく、子供用の小さな椅子とテーブルを用意する。
 なんだか、懐かしい。
 自分も小さい頃は、これを使っていた。
 亮太と向かい合って、絵を描いていたころを思い出す。