君はいつでも宝物をくれる

 リビングには、亮太のお母さんもいるし、そんな大胆なことはしないだろうと思っていた。
 でも部屋に入るなり、サトを抱きしめてきた。
 少し力が強くて、驚く。
「りょ、りょうちゃん、痛い……」
 その言葉に腕を解いた、ムクれた顔をした亮太と目が合う。
「嫉妬した……」
「え?」
「川端と仲良く笑ってただろ」
「あ……」
 今までかっこいいばかりだった好きな人が、可愛いと思えたのは、これが初めてだった。
「りょうちゃん、可愛いね」
「……りょ・う・た・だよ」
 サトの頬を両手でムニムニして、唇を寄せてくる。
「おばさんいるんだよね」というサトの問いに動きが止まる。
 その間近に寄せられた悩む顔が可愛くて、思わずサトから唇を寄せた。
 触れるだけのキス。
 亮太から小さなため息が漏れた。
「ごめん、りょうちゃん」
「いや、俺こそ、がっついた」
 目を合わせ笑い合う。
「サトに見せたいものがあるんだ」
 亮太は、そう言って、絵画教室で描いたサトの肖像画をみせた。
「覚えてる? 絵画教室止める日にサトを描いた」
 その肖像画を持ったまま、「うん、覚えてる」と呟く。
「これは俺」