君はいつでも宝物をくれる

 色が次々と変化していたのに、それでも怖くなかった。
 ――好きだ――。
 その言葉のせいかもしれない。
「……それでね、先生、平先生、聞いてる?」
 漫画家志望に声を掛けられてハッとする。
「先生って……えっと、川端くんでしょ。先生になるのは」
 そう言うと、顔を真っ赤にしながら「先生になれるようにがんばるぜ」なんて言うものだから、思わず可愛い人だななんてことを思ってしまった。
 その様子を周りの人も見ていて、川端は、皆に「先生」と揶揄われて笑っていた。
 サトも一緒になって笑った。
 
 素直に笑顔が出来るようになった。
 人を怖がらなくなった。
 それでも、肖像画は描けなかった。
 スケッチブックには、風景画が多くなっていた。
 亮太以外の肖像画でも、鉛筆が止まってしまう。
 描こうと思えば思うほど、手が震えてしまうのだ。
 なぜなのか自分でも分からなかった。
 亮太を描きたいのに……。
 部室の上から見るサッカー部の練習でも、隣でゲームしている姿を見ても描けなかった。
 
 夕飯を食べた後、サトは亮太の部屋に来ていた。
 告白されて、二人きりになるのは初めてで、ドキドキする。