君はいつでも宝物をくれる

 ハアハアと息をきらし、額の汗を袖で拭う。
「なんで?」
「なにしてるの?」
 二人同時に発した言葉に、気まずい沈黙が流れる。
 
 しばらく二人とも無言のまま、亮太は、サトの隣に座った。
「絵描いてたの?」
 その言葉に、びくりとしたが、すぐに首だけ振った。
 グラウンドに吹く風が地面で小さな渦を巻いて、枯れ葉が散っていく。
「サト……俺……あの絵が好きじゃないって言ってごめん。選ばれるすごい絵をかいたのに、ひどいことを言った」
 こちらを向いて頭を下げる。
「……僕も、あの絵は好きじゃない」
 何か言おうとしている亮太の目を見る。
「絵が描けないんだ……。ここに来たら、描けるかもしれないと思って」
 二人でグラウンドを見る。
 誰かが置いて行った、ボールが風で転がっている。
「ここで、よく描いてもらった」
「帰りが暗くなって、よく母さんに怒られてたね」
「……なあ、昔、こんなに暗いのに、なんで描けたの? 俺が明るいって言ってたけど……金色だから?」
 昔話していた事を覚えていてくれて、一瞬驚いたが、嬉しくなった。