君はいつでも宝物をくれる

 稚拙すぎて恥ずかしくなる。
 顔を赤くしたサトに、二人の先輩は優しく微笑んでいてくれていた。
 
 
 部活帰り、いつもの三人で画材店に行く。京香は絵具を見に、俺と部長は、実用書コーナーで横並びに絵画名画の本を見ていた。
「俺さ、水墨画に興味あるんだよ。今度、顧問に言ってみようかと思ってさ」
 部長が、水墨画のページを見せて言ってくる。
「いいですね」
「いろんなものにチャレンジして、結果、好きなものを続けていきたいからな」
 ――好きなものを描き続ける。欲しいものを思い続ける。
 小百合先生の言葉を思い出していた。
「部長は、失恋てしたことありますか?」
 突然の質問に、一瞬驚いた表情をしていたが、絵具コーナーをチラリと見てから小声で教えてくれた。
「失恋もなにも、告白すらしたことない。だけど、何も言えてないのに失恋したような気分になっている」
「……」 
「もしかして、(たいら)、失恋したのか?」
「僕も告白したことないです……」
 そう、告白すらしていない。というか、告白うんぬんじゃない。
 でも失恋した。