君はいつでも宝物をくれる

 小学二年生に上がる頃には、サトがいじられて泣くようなことは無くなっていたし、色に対しての耐性がついたのか見えているものと上手に付き合い始めていたようだった。
 その頃のサトは、絵を描いている時はとても集中していて近寄りがたかった。
 段々と付き合う友達も変わってきて、その頃仲良くなった奴に誘われてサッカーを始めたんだ。
 サッカーは楽しかった。
 
 絵画教室を止めると言った時、サトは凄く悲しい顔をしていた。
 でも、俺は少し距離ができてホッとしていた。
 サトの絵に対する集中は、自分には出来ないものだったし、どんどん上手になる彼に嫉妬もした。
 同じ時期に始めたのに差がつくこと。
 サトにかっこ悪いところを見られたくなかった。
 いつまでも羨望の眼差しで俺を見ていてもらいたかった。
 俺が、絵画教室を止める日、サトを描いた。
 正直、どんな絵になったかなんて覚えていない。
 家のどこかに隠すようにしまった。
 恥ずかしかったからか、何かの恐れか、わからないけど。
 あまり良い仕上がりじゃなかったはずだ。
 
 ――75番。
 受付の電光掲示板に自分番号が表示され、窓口に向かう。