でも相変わらず、サトは視線を合わせてくれない。
 
 リビングのテーブルに置いてあった、ローカル新聞に載っていた、サトの『空っぽ』という絵と喜んでいる記事を読んで、酷くイライラしてしまった。
 ――この絵は好きじゃない。
 たしか、そんな風に言ってしまった気がする。
 サトは、それから一言も発さず、俺のことも見なかった。
 気持ちを伝えて、話しを聞こう。なんて息巻いていたのに……。
 あの絵を見ると、心が揺れる。嫌なことを思い出させる。
 
 *****

 足のケガは良くなっていた。
 今日は部活を休み、病院に来ていた。
 たかが捻挫だが、クセになるケガだから、サッカーを続けたいならちゃんと治せと周りから言われていた。
 総合病院の受付ロビーは、沢山の人が座って待っている。
 その中に、5歳くらいの男の子が一人、つまらなさそうに座っていた。
 手の指に包帯を巻いていた。
 どこかから落ちた時とかに手をついたのかもしれない。頬にもかすり傷があった。
 
 両親が離婚したのは、俺が4歳のときだ。
 どういう経緯でそうなったのか知らないけど、父が出て行った。