時間を確認しようとスマホを取り出した時に、ゆきちゃんが話しかけてきた。
「亮太、大丈夫? 最近落ち込んでいる?」
「えっ?」
 突然そんなことを聞かれて、戸惑った。
「なんていうか……、上の空っつうの? から元気? って感じ」
 これがいわゆる女の感とかいうやつなのか……。
「私さ、お姉ちゃんがいるんだけどね……」
 と、ゆきちゃんの身の上話が始まった。
 ――6歳離れている姉は、最近やたらと冷たい。歳が離れているから、いつも仲が良いという感じでもなかったけど、何も言わずに視線だけが冷たいのが嫌だった。髪型とか化粧の仕方とか洋服を借りたとかで機嫌が悪いだけだと思っていた――。
「だからさ、意味わからんから聞いたのよ! そしたら、彼氏できたことが心配なんだって!」
 うざーい。と言って笑う。
「でもさ、聞かないとわからないもんなんだね。……心配とかしちゃうんだって……姉妹なんてさ一番近いから、わかったような気持ちになってたけど」
 (一番近くにいる存在か……)
 俺は、サトのことをどれだけ知っているのだろう。わかった気になっているだけ。