サトの絵が、市内に飾られる一枚となったからだ。
 あまり、感情を表に出さないサトも、クラスメイトの言葉を素直に笑って喜んでいた。
 つまらなかった。
 その笑顔が、無性にムカついた。
 なんでこんなに腹が立つのだろう。
 サトの才能にイラついているのだろうか?
 俺はケガをして試合にも負けたから?
 そんなことを考えている自分がかっこ悪くて情けなくなる。

 サトは、小さい頃から絵が好きだった。
 夢中になると、他のことも俺のこともほったらかしで絵を描いていて、それが嫌で、サトを振り回していた。
 ついてきてくれる心地よさが、優越感に浸れることが、なによりも嬉しかったのだ。
 俺は、サトみたいに絵に対しての情熱がなかったから、この年齢まで続けていることに素直に尊敬していた。
 今では、そう思えているけど、絵画教室を辞めるまでは、どこか恐ろしかった。
 あの情熱や集中は、俺にはない。
 彼の才能を妬んでいた。
 同じ土俵に立つのを止めて、ようやく解放されたような気持ちもあった。
 絵は好きだったけど、サトと比べられることが嫌だった。
 俺は、サトから追いかけられたい。