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 新学期が始まった。
 日焼けした、髪を染めたという、見た目の変化がある生徒。
 どこかしら大人びた雰囲気を醸し出す生徒。
 まだ気持ちは夏休み中というくらいに、始業式の教室はザワザワしている。
 亮太は、この週末にあるサッカー選手権予選会のことで頭がいっぱいだった。
 あとは……。
 サトのこと。
 隣に住んでいるが、高校に上がってから一緒に登校したことがない。
 部活の朝練があるから時間が合わないのもあるが、どこか避けられているようにも感じていた。
 中学生の時も、一緒に登校したことは数回。

 サトが同じ高校に進学するとは思わなかった。
 亮太は、なるべく公立高校が良いと母から言われていたのもあって、サッカー部がある近くの高校と決めていた。
 サトは、美術部の有名な私立に行くのだと思っていた。
 絵画教室の先生も通っていた学校だと、パンフレットが家に置いてあったのを見ていたからだ。

 春休みに、同じ学校だと聞かされた時は、驚いた。
 でも、今ならわかる。
 サトは俺が好きだから。

 教室にいるサトを見てしまう。
 目が合った。
 すぐに視線を外される。
 でも、また目が合った。
 そして外す。

 ――もっと見て欲しい。俺だけを見て欲しい。