そこから、サトを意識していた。
 友達、幼馴染、兄弟みたい育ったのに。
 最初は、サトを見て、湧き起る衝動に戸惑った。
 でも、これが恋愛感情なのだと知ったのは、あの花火大会の時だ。

 夏休み。
 サッカー部の練習は一日休み。
 田中と亮太は、駅前の本屋で人を待っていた。
「待ち合わせ時間て何時だっけ?」
 寒すぎる店内の漫画コーナーで、緊張した面持ちの田中がうろうろと歩き回っている。
「12時」
 スマホの時計を見ながら、店内に入ってくる音がするたびに、入り口に視線を投げて、うろうろしている。
「立ち読みでもして、落ち着けよ。 あと10分もあるし」
 目の前にある漫画を亮太は田中に手渡す。
 アニメ化されている人気のある漫画だが、パラパラとめくるだけで全く読んでいない。
(ま、そりゃそうか。初デートだもんな。緊張もするか)
 入り口ばかり気にしている田中を横目に、自分が田中の立場だったらと考える。
 デート。
 サトと出掛ける約束をした時は、とても緊張をした。
『なんで画材店?』なんて質問されて焦ったけど。
 本当は、一緒に出掛けたかった。
 ただそれだけ。
 あとは、自分に興味を持っているのか知りたかった。
 サトの肌は相変わらず白くて、強い日差しに具合が悪くなるんじゃないかと心配だった。
 中学生の時、めちゃくちゃ日焼けしたサトが痛そうだったからだ。