最初は、揶揄うつもりで、絵のことは別の機会に言おうと思っていたのに。

 ――あんなところを見てしまったから。
 
 サトが脱衣場に飛び込んだ引き戸が数センチ開いていた。
 自分のシャツを置き忘れたことを気付いて、すぐにドアを開けようとしたときに、俺のシャツを顔に(うず)めて、白い肌を赤くしているサトが見えた。
 風呂なんて、随分と一緒に入っていない。だから、しばらく見ていなかった大人になった身体を凝視して、喉が鳴った。
 妙な気持ちになった。

(なんだ? これは……。この気持ちは)

 一度、リビングに戻り、サトの母からの「どうしたの?」という声にシャツを取りに行く用事を思い出す。
 大きな声を出しながら脱衣所に近づいた。
『あれ、俺、シャツ置いてきちゃったかな』
 ドキドキしながらドアを開ける。風呂場でシャワーを浴びているシルエットにまた妙な気持ちが湧き上がった。
 ――どうかしている。
 このモヤモヤした気持ちを払拭したくて、思わず絵が描かれたノートを見つけたふりをした。
 揶揄うつもりでいたのに、真剣になってしまった。
 まさか、AO1のキョウヤが出てくるとは思わなくて、ムッとしてしつこくしてしまった。
 『似ているから好きなんだ』という言葉とサトの頬を染めた顔がずっと頭から離れなかった。