サトは、幼馴染で、隣に住んでいて、ずっと近くにいて兄弟みたいに育った。
 同じ部屋にいるのに趣味が違うからお互い別々の好きなことしてても、それが普通で。
 居心地が良かった。
 俺がサッカーのビデオをみたり、ゲームをしていて、隣ではサトが絵を描いたり、漫画を読んだりしていた。
 ジュースあるよ。お菓子あるよ。テスト勉強してる。理科の先生がさ。駅前のパン屋にね。
 そんな他愛もない会話をしていても楽しかった。

 中学生の頃から、お互いつるむ友達は違うから距離はあったけど、家に行けばいつも通りの会話ができて嬉しかった。
 高校生になって同じクラスになってから、サトが少しよそよそしくなったけど、家に行けばいつも通りだったし、こっそり見たスケッチブックには俺を(えが)いていることを知っていた。
 サトの家にいくたびに、いつも同じ場所にあるノートを見ていた。
 ゲームをしている。目を瞑ってうたたねしている。ジュースを飲んでいる。笑っている。
 全部俺だった。
 美術部の上から見ていることも気付いていた。嫌な気はしなかった。むしろ嬉しかった。