亮太が、リビングのテーブルに置いてあった、ローカル新聞に目を留めた。
紙面には、サトの描いた絵が載っている。タイトル『空っぽ』。
「これ、俺見たよ。すごい迫力だと思った」
「え? 見たの?」
亮太は頷き、紙面を手に取った。
紙面に書かれている文字をみる。サトが写真と共に取材を受けた文章が載っていた。
――夢中で描いて、気が付いたら出来上がっていました。…………このような良い評価をもらえて嬉しく思います――。
「俺は、この絵は好きじゃない」
小さく呟いた声と亮太のひどく寂し気な瞳が、僕の胸を貫いた。
亮太の色が、灰色に濁っていく。急に雨雲が覆いだしたように不安になる。
そういえば、最近の亮太の色は、濁って見えることが多くなった。
その後、夕飯を一緒に食べたが、全く味がしなかった。
亮太は、栗ご飯が美味しかったと、レシピを友達に教えたいからと母に聞いてメモを取っていた。
亮太が帰った後、「彼女かしら。知ってる?」とさっき聞いたレシピは、最近知り合った女の子に教えるんだそうよ。と教えてくれた。
心がチクチクと痛んでしょうがなかった。
