季節は十月になった。
偶然、サトの母親と亮太がマンションの前で鉢合わせをし「今日は、栗ご飯だから、食べにいらっしゃい」と誘ったようで、一緒に帰ってきた。
サトが帰ってきたのは、その数分後で、亮太の姿を見るなり固まってしまった。
亮太はケガをしてから、サトの家には一度も来ていない。
学校では見ていたが、久しぶりに自分の家にいる亮太を見て、心が高揚した。
「ひ、久しぶり」
「おう」
「足、大丈夫?」
足首にはまだネット包帯が見えていた。
「ああ、うん。もう大丈夫だけど、捻挫はクセになるからな。ちゃんと治しておくように先輩からも監督からも言われた。」
「そうなんだね」
良かった。普通に話せる。
そう。友達。僕たちは幼馴染。
だから、このまま。このままでいいんだ。
彼女、元気? なんて話せたら一番いいのだろうけど、そういう軽口が出てこない。
