サトの絵は、顧問の言葉通り、市内に飾られる一枚となった。
 学校にもローカルのテレビ局が来て、取材を申し込まれるなど、サトは時の人となっていた。
 今まで、サトのことを気持ち悪いと言っていたクラスの女子も「サト君て芸術家なのね」なんて心にもないことを言って話しかけてくる。
 あの絵は、好きじゃない。
 それでも、初めて他の人から絵を褒められたことが嬉しくて、心の中で浮足たっている自分が居た。

 絵を描こう。
 他の絵を。
 そう思っていた。

 でも、鉛筆が動かなかった。