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 市主催の美術展覧会が開催された。
 美術部員全員と顧問で学校帰りに会場へ向かう。
 会場の中は自由行動で、サトと京香と部長で、見て回る。
 絵画のフロアーに三人の絵が、張り出されている。
 サトは、京香と部長の絵を見て素直に驚いていた。
 いつも部室で絵を描いている時とは違う仕上がりの絵に息をのんだ。

 タイトルは『すき』
 京香の絵は、蔭谷祥(かげたにさち)が高跳びをしている姿だった。
 真っ青な空に向かって飛びあがる祥が美しく描かれていた。
 水彩画特有ののびやかでかつ淡い色が素晴らしく、しばらく目が離せなかった。
「京香先輩が羨ましいです」
 小さく呟いたサトの言葉に、京香は微笑んだ。
 ――好きな人をこんな風に描けて羨ましい。

 部長の絵は、夏休みに家族旅行で行った立山連峰の景色画だった。
 アクリル絵の具で彩られた絵は自然の広大さを表していて、やっぱりこの人上手だなと思った。
 京香も部長も小さい頃からサトとは違う絵画教室に通っている。
 スケッチしている絵は、いつも上手だなと思っていたが、改めて絵具がのったものは迫力がある。