君はいつでも宝物をくれる

 
 絵画教室が終わって、片付けを手伝っている最中。
 小百合は、生徒の絵をまとめ、サトは、パレットや筆を洗っていた。
 洗い終わった道具を一緒に布で拭く。
「何があったのか話せる?」
「……」
「亮太君と喧嘩した?」
 亮太という言葉に、サトの肩が、びくりとした。
「小さい頃から、サトくん見て来てるから……ここ最近のアナタの変化は感じてたんだけど、間違っていたらごめんなさい……」
 言葉を選ぶようにゆくりと話を続ける。

 ――サトくんが絵を描く最初のきっかけは、色が見えるということだったと思うけど、段々と絵を描く事が楽しくなっていると感じたの。アナタのスケッチブックに描かれている亮太くんを見た時は、生き生きしている絵にホント驚いた。絵を描き続けて欲しいなと思った。……なにか、嫌なことやショックなことがあっても、アナタの好きなものを書き続けて欲しい――。

「……描けないんです」