君はいつでも宝物をくれる


 絵画教室に行っても絵を描く気にはなれなかったから、しばらく休もうとしていた。しかし……。
「描かなくてもいいから教室には来て欲しいわ。色々手伝って欲しいのよ」
 松岡小百合にそう言われて、しぶしぶ教室に通った。

 美術展覧会は、地域の絵画教室も協賛する。
 小百合もスタッフとして、応募された絵画を確認していた。その中に、サトが提出したものも見ていた。
「展覧会に出す絵、見たわよ」
 サトはビクリとした。
 別に悪い事をしたわけでもないのに、小さい子が悪さをしたのを見つかったような後ろめたさがあった。
 おそるおそる小百合の顔を伺う。
 小百合は、いつもと変わらない微笑みのままサトを見ている。
「絵が上手くなったと思った」
「あれは、サトくん自身?」
 真っ直ぐに見られて、思わず目を伏せて「はい」とだけ返した。