部屋に籠り、今鏡でみた自分の絵を描いた。
 何枚も、殴る様に描き続けた。
 部屋の鍵を閉めたまま、ずっと絵と向き合っていた。

 母親も帰ってきていて、部屋をノックしてくれたらしいが、全く聞こえなかった。
 しばらくして、部屋のノックがして、亮太の声がした。
「サト、大丈夫? 俺のメールみた? 寝てる?」
 その声で我に返り、絵を描いていたことと、日が暮れていることに気付いた。
 部屋のドアを開けると、亮太が心配そうな顔をしていた。
「大丈夫だよ。ありがとう」
「そうか、プリン買ってきたから、おばさんに渡しといたよ」
「亮太、サッカーユニフォームのレプリカは、買った?」
 急な質問に、亮太の目が泳いだ。
 慌てている。
「ああ、うん。友達と買いに行った」
「友達?」
「そうだよ。ごめんな。一緒に買い物行こうって言ってたのに」
「いいよ。僕なんかと居ない方がいい」
 その言葉にムッとした亮太の手が、サトの肩を揺らす。
「なんで? なんで、そんなこと言うんだ」
「言葉通りだよ。僕は亮太のそばに居ないほうがいい」
「は? 俺の試合見に来て、絵を描いてって言ったよな?」
 亮太が怒っている。
 なんで? なんで、そんなに必死になるの?
「今、展覧会に出す絵を描いていて忙しい。試合も見に行かない」
 怒った顔から、サッと血の気が引いていくような青い顔になった亮太を見つめる。
「ごめんね」小さく呟いてドアを閉めた。