部室で絵が描けたわけではなかった。
 部長からもらったテーマを書く用紙と真っ新(まっさら)なキャンパスを部屋に置いて、そのままベッドに倒れこんだ。
 なんだか頭が痛い。身体もだるい。いつの間にか眠っていた。
 そのまま朝を迎えた。

 母親の呼びかけに目を覚ます。
「あらら、熱あるわね。今日は学校やすみなさい。 お母さん仕事に行ってくるから、冷蔵庫に色々入ってるからね。ちゃんと食べるのよ」
 ……風邪か。
 昨日よりは頭の痛さはない。今は喉が痛い。
 起き上がって、冷蔵庫から水を飲む。
 お腹が空かないので、その水だけ持って、部屋に籠った。
 ベッドに転がり込んで、目を閉じる。
 よくドラマやアニメでは、失恋した主人公が、「死にたいとか、何もいらないとか」そんなことを言う気持ちが少しわかった。
 熱のせいなのかな。
 このまま死んでしまったらいいのにな。とか、こんな世界なくなればいいとか……普段だったらアホだろうという考えが浮かぶ。
 どうして僕は男なんだろう。どうして亮太が好きなんだろう。亮太はなぜ彼女を選んだのだろう。
 僕は、幼馴染で友達なだけだ。
 見ているだけで良いと思ってたのに……本当は見られたい。(さわ)りたい。触られたい。
 欲望の塊だ。嫌になる。
 喉が痛くて、頭も痛くなってきた。
 また眠りに落ちていった。