そんなサトの表情を見て、フッと口元を緩ませた亮太は、いつもの友達に食堂へ誘われて教室の外へ出て行った。
 キョウヤじゃない。亮太を描いているんだ。
 言葉にしたい……でも、それはできない。

 今日は、部活が休み。絵画教室がある日。
 一旦、家に帰り、軽食を食べて準備をする。
 絵画教室までは、電車で行く。
 賑やかな街中を通り抜けて、市役所関連の建物が立ち並ぶビルの中にある。
「こんにちは」
 挨拶してはいると、ここの教室の先生、松岡小百合がテーブルを出して準備をしていた。
 サトに気付くと、にっこり微笑み「こんにちは」と返してくれる。
 小百合は、土日の子供教室と平日夜の教室を担当している。サトが幼少期の頃は日曜日の教室に通っていた。
 
「手伝います」
 生徒は、まだサトしか来ていなかった。
 端に置かれているテーブルや椅子を運ぶ。
 絵画教室の生徒は、全部で十人。
 一番若いのが、サト。後は、二十代から七十代まで幅広い。
 本格的に学ぶというより、趣味で楽しむ人がほとんどだが、時折開催される二科展などに応募する人もいる。
「サトくん、どう? 最近は?」