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 サトは、部活以外でもクラスで絵を描いている。
 友達は少ない。
 人の喜怒哀楽が見えるのは、疲れる。
 態度や顔つきが平静を装っていても、色で見えてしまう。
 だから、いつも適当に話を合わせて、あとは絵を描いている。
 亮太は同じクラスで話しかけてくれるが、ほんの一言二言。つるむ友達が違う。
 これで良いと思う。
 僕たちが幼馴染で家が隣同士。だから帰りが一緒になったり、夕飯を食べたりという話は、知っている人はいるけれど、クラスメイトの女子は露骨に嫌な顔をする。
 いわゆる妬みというやつだ。
 僕の見た目が良いとか、頭が良いとか、運動部のエースであれば、納得がいくのだろうか。
 こんなダサい奴が、亮太の隣にいて仲良くしていることは、特に女子にとっては異様な光景に見えるのかもしれない。
 
 いつものように休み時間に絵を描いていた。
 肖像画を描くと、決まって女子から気持ち悪いと陰口を叩かれる。
 別に、アンタらを描いているわけじゃない。
 と何度、心の中でボヤいたか。
 サトが描いているのは、体育館でスピーチする先生の姿とそれを聞く生徒や、校庭で体育の授業を受ける生徒達の姿だ。ある程度、頭に記憶しておいたものを風景画のように描いている。