スマホをいじりながら、「割とすぐらしいからさ」と呟いた後、サトを見つめてこう言った。
「また、一緒に出掛けよう」
「え? う、うん」
「やった!」そう言って笑う顔に胸が苦しくなる。
 このままで。
 このままでいいんだ。
 僕の気持ちは……。知られてはならないのだから。

 亮太のスマホが鳴った。店を出て、電話に出る。
 僕は、少し離れたところから亮太を見ていた。
 亮太の表情が少し曇る。困ったような顔をしながらも笑っていた。
 電話を終えると「ごめん」と言って手を顔面で合わせて言う。
「この後、サッカー部の先輩にカラオケ誘われちゃって。サト……、一緒に行く?」
 言いずらそうに申し訳なさそうに言う亮太。
 優しいよな。
「行かないよ」僕もやんわりと返す。
「だよな……なんか……ごめん」
「大丈夫。久しぶりに……、りょ、亮太と出掛けられて楽しかったよ」
「俺も。また連絡するから」
 真っすぐに見つめられて、恥ずかしくなったけど、僕も笑顔で返した。