「色が見える。って、小さい頃言ってたよな。たしか、俺は金色だったっけ?」
 小さい頃と同じ屈託のないままの笑顔で問われて、あの頃を思い出す。
 ――サト、おれ金色なの?。えー、なんかカッケー。
 飛び上がりながら言ってくれた言葉を思い出す。
 恥ずかしくなって、顔を下に向けたまま、こくりと頷いた。
「金色。すごくかっこいいよ」
 小さく呟いた声に、満足気な顔をした亮太は、「俺が買ってやる」と買い物かごをサトから取り上げた。
 その姿が、小さい頃に何かとかっこつけたがる強がり亮太のままで、思わず吹き出してしまった。
「なんだよ。笑うなよ」
「ごめん。でも、絵具……高いよ」
「え……」
 結局、絵具はサトが自分で買った。

「じゃ、昼代は俺がだす」
 亮太が息巻いて言ってくれたが、昼どきで、どこのレストランもすぐには入れそうにない。
 ファーストフード店や、ラーメン店も沢山の人だ。
 サトは人混みが苦手だ。
 色が見えすぎて、気分が悪くなる。
 それでも、小さい頃よりかは、だいぶマシになってきたのが。
 亮太が、何かを調べてきてたのか、スマホを見て歩き出す。