君はいつでも宝物をくれる

 タオルに隠すようにキスをする。
「……!」
 笑う亮太に、「ここ外だよ」と焦って言う。
「外じゃなければいい?」
 照れた表情と少し挑発的な言葉に喉がなった。
 もっと、近づきたいという欲求を奥にしまって、振り絞る。
「……僕たちは男同士だし。変だと思われる……」
 小さく震えながら発した言葉に、ベンチの上の手に亮太の手が重なる。
「思わせておけばいい」
 小さい声が返ってきた。
「……俺だって怖い」
 グラウンドを向いたまま、不安顔の亮太が呟いた。
 亮太の色が、濁っていく。
「でも、サトが俺を見てくれないほうが怖いんだ」
 いつでも輝いている亮太でも、恐れや嫉妬、怒りで見たことのない色が現れる。
 亮太の指が震えている。
 重なった指を絡めた。
「僕は、ずっと亮太を見てるよ」
 こちらを向いた彼の顔が、優しい笑顔をになる。
 キラキラした笑顔は、僕の宝物。
 見つめ合う二人の頭上は、抜けるような青空で、緑に茂った木々にはセミの鳴き声が響いていた。