○離れの和室。
桃寧と和室の掃除をしている八千代。
八千代モノ『皆様、こんにちは。八千代でございます』
八千代モノ『最近の桃寧様は実に表情豊かでいらっしゃいます』
微笑んでいる桃寧の絵。
顔を真っ赤にしている桃寧の絵。
驚いている桃寧の絵。
八千代モノ『ときに物憂げな表情も見られますが──』
沈んだ表情の桃寧の絵。
暁良がやってきて、桃寧の表情がふわりと柔らかくなる。
八千代モノ『お二人ならば、幸せな未来を築けると思うのです』
微笑み合う桃寧と暁良。
八千代モノ『桃寧様は恋心を否定なさっているので、それはまだ先のことかもしれませんが──』
桃寧「八千代さん、よろしいですか?」
改まった様子で八千代に話しかける桃寧。
桃寧「私……暁良様にいただいてばかりで苦しいのです……」
八千代「……と、おっしゃいますと?」
話を聞きながら桃寧にお茶を差し出す八千代。
桃寧「暁良様は自分ばかり重責を背負って……でも私のことは甘やかしてばかりで……」
恥ずかしそうにしている桃寧。
八千代(あら〜〜〜)
桃寧「暁良様のために……私に何かできることはないかと思いまして……」
八千代(あらあら〜〜〜)
いつも通りの穏やかな笑みを浮かべている八千代。
桃寧「でも……私にできることが思いつかなくて……」
八千代『それは愛では?』
少し俯く桃寧。
八千代モノ『──なんて、私の口からは申せませんが』
八千代「では贈り物などいかがでしょう?」
ぽんと手を叩く八千代。
桃寧「しかし……あまりお金は──」
八千代「高級品ばかりが贈り物ではございません!」
八千代「この八千代に案がございますよ」
ウインクする八千代。
木材と小刀を用意する八千代。
複数の木片を見比べる桃寧。
木片を小刀で削る桃寧。
いきなり背後から暁良が現れ、作品を隠す桃寧。
桃寧の頭についた木屑を優しく取り除く暁良。
恥ずかしそうに笑う桃寧と、穏やかに笑う暁良のアップ。
八千代が部屋の隅に蟲(式神)を見つけ、すかさず滅する。
八千代モノ『今の暁良様には敵が多い』
虚空を睨む八千代。
八千代モノ『並の式神ならば暁良様の霊力に気圧されて近づくこともできない……』
暁良が圧倒的なオーラ(霊力)を放っている絵。
八千代モノ『しかしこの建物に入り込むとは……分家の誰かの仕業だろう』
一族のイメージを示す。それぞれが札を持っていたり式神を操ったりしていて、術者として優れていることを示す。
八千代モノ『覚醒していない妻巫女に──』
八千代モノ『一人で霧賀を支える暁良様に──』
八千代『揺さぶりをかけるために──!』
蘇芳「さすが妻巫女様付き。術師としての格が違うな」
八千代の後ろから蘇芳が現れる。
八千代「貴方はご当主直属の部下なのに、なぜあの程度の蟲をのさばらせておくのです?」
蘇芳「面目ない」
般若のような顔で蘇芳を睨む八千代と、目を逸らす蘇芳。
蘇芳「言い訳はしたくないが……」
目の端に蟲を捉える蘇芳。
蘇芳「……次から次に湧くんですよ」
すかさず蟲を滅する。
八千代「嫌がらせというにはあまりにも──」
八千代も他の蟲を滅する。
蘇芳「当主の力を削ぎ……己の発言権を増そうとする輩がいるのかもしれません」
八千代「はぁ?!」
蘇芳「このまま桃寧様が覚醒しなければ──この先も暁良様がおひとりで霧賀領を支えることとなる」
暁良が一人で自分の霊力を霧賀領に行き渡らせているイメージを示す。
蘇芳「今の霧賀は正直、ギリギリです。お一人で霧賀の気を安定させようとすることに無理がある」
八千代「……」
蘇芳「危機的状況ではありますが、私腹を肥やしたい連中にとっては好機ですよ」
八千代「フン……!」
八千代モノ『「妻巫女を覚醒させられない当主」』
黒い背景に一人佇む暁良。
八千代モノ『「一人で満足に領内を安定させられない当主」』
八千代『そうして暁良様を侮る連中──!』
分家の人間たちが嘲笑っているイメージを示す。
桃寧に手を振って仕事に戻っていく暁良。
名残惜しそうにそれを見つめる桃寧の絵。
二人の様子を眺める八千代。
八千代モノ『お二人が正式に夫婦となれば、狙い所も減るのだけど……』
険しい顔をする八千代。
八千代モノ『しかし暁良様は──桃寧様の気持ちを重んじておられる』
桃寧に温かい視線を送る暁良の絵。
八千代モノ『だからお二人が結ばれるまでは──私どもがお二人の幸せをお守りするのです』
時間が経過したことをコマを空けて示す。
◯離れの和室
暁良に小さな箱を差し出す桃寧。
暁良「これは……?」
桃寧「ええと……つまらないものなのですが……」※不安そうに
暁良「もしかして、僕に……?」
桃寧「は、はい……!」
もじもじしている二人。
和室の横の廊下では、八千代と蘇芳が小声で話し合っている。
これまでに出たきた蟲よりも、一回り大きな蟲が八千代たちと対峙している。
蟲はおどろおどろしい瘴気を纏っている。
八千代が術を放つ。
八千代「術が通らない?!」
術を無効化されて焦る八千代。
八千代「補助をお願いします!」
蟲が瘴気を放ち、床が黒く変色していく。
蘇芳「やってますよ!しかし……これは……!」
札を手にしながら焦っている蘇芳。
八千代「この強さ、どうしたらいいって──」
蟲の攻撃が八千代の頬を掠める。
焦っている二人をよそに、暁良がプレゼントの箱を開ける。
次の瞬間に蟲たちが霧散。
八千代と蘇芳が顔を見合わせる。
暁良「これは……もしかして、桃寧さんが手ずから?」
目を見開く暁良。
桃寧「はい……稚拙なものでお恥ずかしいのですが……」
もじもじと顔を俯かせる桃寧。
暁良モノ『稚拙?とんでもない』
驚きを隠せない様子の暁良。
暁良モノ『流れ出ずる優しく清らかな気──』
箱の中のプレゼント(桃寧が彫った根付け。桃のモチーフ。老婆に卸していたものより、デザインが凝っている)の絵。
暁良モノ『最近、ずっと私を取り巻いていた悪しき気配が──瞬時に消え去った──』
桃寧「ええと……願いを込めて作りました」
一生懸命に話そうとする桃寧。
暁良「願い……?」
桃寧「はい……。暁良様が健康で楽しく、幸せで──」
暁良が箱から根付けを取り出す。
桃寧「あと、お仕事も順調に……とにかく、すべてうまくいきますように、と……」
暁良の目にきらきらと輝いて見える桃寧。
スーツのフラワーホールに根付けを飾る暁良。
嬉しそうに微笑む暁良の表情アップ。
桃寧「その……心を込めて作りましたけれど……、暁良様のお持ち物としては不釣り合いだったやもしれません。その、不用でしたらば──」
暁良「とんでもない!」
思わず桃寧の手を取る暁良。
暁良「僕は最高に幸せだ!桃寧さんが心を込めて作ってくれたプレゼントなんて!」
暁良の喜びようにびっくりする桃寧。
暁良「それに!桃の花を身につけるってことは……桃寧さんがずっと側にいるのと同じではないですか!」
暁良が桃寧の手を取ったまま桃寧に跪く。
慌てて暁良を立ち上がらせる桃寧。
謝る暁良。
八千代モノ『ああ──』
顔を見合わせて笑い合う桃寧と暁良の姿。
八千代モノ『私などが案ずる必要など、ないのかもしれません』
それを見て微笑む八千代と蘇芳。
八千代モノ『お二人が並び立つ日は確実に近づいている──』
暁良と桃寧のシルエット。青空をバックに堂々と並んでいる。
◯孝久の私室
孝久「贈り物がやられてしまったな」
蟲たちを手で弄びながら。
孝久「どれ、今度はもう少し大きめなものを差し上げねばなるまい」
にやりと笑う孝久。
そんな父の様子を物影から無表情で見つめる蘭子。
桃寧と和室の掃除をしている八千代。
八千代モノ『皆様、こんにちは。八千代でございます』
八千代モノ『最近の桃寧様は実に表情豊かでいらっしゃいます』
微笑んでいる桃寧の絵。
顔を真っ赤にしている桃寧の絵。
驚いている桃寧の絵。
八千代モノ『ときに物憂げな表情も見られますが──』
沈んだ表情の桃寧の絵。
暁良がやってきて、桃寧の表情がふわりと柔らかくなる。
八千代モノ『お二人ならば、幸せな未来を築けると思うのです』
微笑み合う桃寧と暁良。
八千代モノ『桃寧様は恋心を否定なさっているので、それはまだ先のことかもしれませんが──』
桃寧「八千代さん、よろしいですか?」
改まった様子で八千代に話しかける桃寧。
桃寧「私……暁良様にいただいてばかりで苦しいのです……」
八千代「……と、おっしゃいますと?」
話を聞きながら桃寧にお茶を差し出す八千代。
桃寧「暁良様は自分ばかり重責を背負って……でも私のことは甘やかしてばかりで……」
恥ずかしそうにしている桃寧。
八千代(あら〜〜〜)
桃寧「暁良様のために……私に何かできることはないかと思いまして……」
八千代(あらあら〜〜〜)
いつも通りの穏やかな笑みを浮かべている八千代。
桃寧「でも……私にできることが思いつかなくて……」
八千代『それは愛では?』
少し俯く桃寧。
八千代モノ『──なんて、私の口からは申せませんが』
八千代「では贈り物などいかがでしょう?」
ぽんと手を叩く八千代。
桃寧「しかし……あまりお金は──」
八千代「高級品ばかりが贈り物ではございません!」
八千代「この八千代に案がございますよ」
ウインクする八千代。
木材と小刀を用意する八千代。
複数の木片を見比べる桃寧。
木片を小刀で削る桃寧。
いきなり背後から暁良が現れ、作品を隠す桃寧。
桃寧の頭についた木屑を優しく取り除く暁良。
恥ずかしそうに笑う桃寧と、穏やかに笑う暁良のアップ。
八千代が部屋の隅に蟲(式神)を見つけ、すかさず滅する。
八千代モノ『今の暁良様には敵が多い』
虚空を睨む八千代。
八千代モノ『並の式神ならば暁良様の霊力に気圧されて近づくこともできない……』
暁良が圧倒的なオーラ(霊力)を放っている絵。
八千代モノ『しかしこの建物に入り込むとは……分家の誰かの仕業だろう』
一族のイメージを示す。それぞれが札を持っていたり式神を操ったりしていて、術者として優れていることを示す。
八千代モノ『覚醒していない妻巫女に──』
八千代モノ『一人で霧賀を支える暁良様に──』
八千代『揺さぶりをかけるために──!』
蘇芳「さすが妻巫女様付き。術師としての格が違うな」
八千代の後ろから蘇芳が現れる。
八千代「貴方はご当主直属の部下なのに、なぜあの程度の蟲をのさばらせておくのです?」
蘇芳「面目ない」
般若のような顔で蘇芳を睨む八千代と、目を逸らす蘇芳。
蘇芳「言い訳はしたくないが……」
目の端に蟲を捉える蘇芳。
蘇芳「……次から次に湧くんですよ」
すかさず蟲を滅する。
八千代「嫌がらせというにはあまりにも──」
八千代も他の蟲を滅する。
蘇芳「当主の力を削ぎ……己の発言権を増そうとする輩がいるのかもしれません」
八千代「はぁ?!」
蘇芳「このまま桃寧様が覚醒しなければ──この先も暁良様がおひとりで霧賀領を支えることとなる」
暁良が一人で自分の霊力を霧賀領に行き渡らせているイメージを示す。
蘇芳「今の霧賀は正直、ギリギリです。お一人で霧賀の気を安定させようとすることに無理がある」
八千代「……」
蘇芳「危機的状況ではありますが、私腹を肥やしたい連中にとっては好機ですよ」
八千代「フン……!」
八千代モノ『「妻巫女を覚醒させられない当主」』
黒い背景に一人佇む暁良。
八千代モノ『「一人で満足に領内を安定させられない当主」』
八千代『そうして暁良様を侮る連中──!』
分家の人間たちが嘲笑っているイメージを示す。
桃寧に手を振って仕事に戻っていく暁良。
名残惜しそうにそれを見つめる桃寧の絵。
二人の様子を眺める八千代。
八千代モノ『お二人が正式に夫婦となれば、狙い所も減るのだけど……』
険しい顔をする八千代。
八千代モノ『しかし暁良様は──桃寧様の気持ちを重んじておられる』
桃寧に温かい視線を送る暁良の絵。
八千代モノ『だからお二人が結ばれるまでは──私どもがお二人の幸せをお守りするのです』
時間が経過したことをコマを空けて示す。
◯離れの和室
暁良に小さな箱を差し出す桃寧。
暁良「これは……?」
桃寧「ええと……つまらないものなのですが……」※不安そうに
暁良「もしかして、僕に……?」
桃寧「は、はい……!」
もじもじしている二人。
和室の横の廊下では、八千代と蘇芳が小声で話し合っている。
これまでに出たきた蟲よりも、一回り大きな蟲が八千代たちと対峙している。
蟲はおどろおどろしい瘴気を纏っている。
八千代が術を放つ。
八千代「術が通らない?!」
術を無効化されて焦る八千代。
八千代「補助をお願いします!」
蟲が瘴気を放ち、床が黒く変色していく。
蘇芳「やってますよ!しかし……これは……!」
札を手にしながら焦っている蘇芳。
八千代「この強さ、どうしたらいいって──」
蟲の攻撃が八千代の頬を掠める。
焦っている二人をよそに、暁良がプレゼントの箱を開ける。
次の瞬間に蟲たちが霧散。
八千代と蘇芳が顔を見合わせる。
暁良「これは……もしかして、桃寧さんが手ずから?」
目を見開く暁良。
桃寧「はい……稚拙なものでお恥ずかしいのですが……」
もじもじと顔を俯かせる桃寧。
暁良モノ『稚拙?とんでもない』
驚きを隠せない様子の暁良。
暁良モノ『流れ出ずる優しく清らかな気──』
箱の中のプレゼント(桃寧が彫った根付け。桃のモチーフ。老婆に卸していたものより、デザインが凝っている)の絵。
暁良モノ『最近、ずっと私を取り巻いていた悪しき気配が──瞬時に消え去った──』
桃寧「ええと……願いを込めて作りました」
一生懸命に話そうとする桃寧。
暁良「願い……?」
桃寧「はい……。暁良様が健康で楽しく、幸せで──」
暁良が箱から根付けを取り出す。
桃寧「あと、お仕事も順調に……とにかく、すべてうまくいきますように、と……」
暁良の目にきらきらと輝いて見える桃寧。
スーツのフラワーホールに根付けを飾る暁良。
嬉しそうに微笑む暁良の表情アップ。
桃寧「その……心を込めて作りましたけれど……、暁良様のお持ち物としては不釣り合いだったやもしれません。その、不用でしたらば──」
暁良「とんでもない!」
思わず桃寧の手を取る暁良。
暁良「僕は最高に幸せだ!桃寧さんが心を込めて作ってくれたプレゼントなんて!」
暁良の喜びようにびっくりする桃寧。
暁良「それに!桃の花を身につけるってことは……桃寧さんがずっと側にいるのと同じではないですか!」
暁良が桃寧の手を取ったまま桃寧に跪く。
慌てて暁良を立ち上がらせる桃寧。
謝る暁良。
八千代モノ『ああ──』
顔を見合わせて笑い合う桃寧と暁良の姿。
八千代モノ『私などが案ずる必要など、ないのかもしれません』
それを見て微笑む八千代と蘇芳。
八千代モノ『お二人が並び立つ日は確実に近づいている──』
暁良と桃寧のシルエット。青空をバックに堂々と並んでいる。
◯孝久の私室
孝久「贈り物がやられてしまったな」
蟲たちを手で弄びながら。
孝久「どれ、今度はもう少し大きめなものを差し上げねばなるまい」
にやりと笑う孝久。
そんな父の様子を物影から無表情で見つめる蘭子。
