本当はオブライエン侯爵家なんて、捨ててしまいたかった。彼と共に行けるならと、心の奥ではそう思った。けれど、ヘイスター王国の貴族として生まれた矜持が、それを許さなかった。
こんなことになってしまうのなら、彼に好きと伝えれば良かった。ほんの少しの間だとしても、一緒に居れば良かった。
……たとえ、すぐに離れることになってしまっても。
「は? 誰だ。その男は。この前に送って来たという男か? ははは。傷物になったお前を知れば、すぐに居なくなる。わかるだろう? お前の価値はその程度しかないんだよ。レティシア。哀れな女だ。何かを期待しても、すぐに無駄に終わる。俺たちから逃げられるはずがないだろう?」
「イーサン……! イーサン。助けて! 助けて……!」
私はどうしても我慢出来なくなって、彼の名前を何度も呼んだ。
それを聞いたドナルドは顔を歪めて、私の頬を思い切り打った。大きな衝撃が走って一瞬、頭が真っ白になった。
強い力で身体を飛ばされたと気がつき、私は床に横たわっていた。手を当てた頬には痛みが走り、じんじんとした熱を帯びていた。
こんなことになってしまうのなら、彼に好きと伝えれば良かった。ほんの少しの間だとしても、一緒に居れば良かった。
……たとえ、すぐに離れることになってしまっても。
「は? 誰だ。その男は。この前に送って来たという男か? ははは。傷物になったお前を知れば、すぐに居なくなる。わかるだろう? お前の価値はその程度しかないんだよ。レティシア。哀れな女だ。何かを期待しても、すぐに無駄に終わる。俺たちから逃げられるはずがないだろう?」
「イーサン……! イーサン。助けて! 助けて……!」
私はどうしても我慢出来なくなって、彼の名前を何度も呼んだ。
それを聞いたドナルドは顔を歪めて、私の頬を思い切り打った。大きな衝撃が走って一瞬、頭が真っ白になった。
強い力で身体を飛ばされたと気がつき、私は床に横たわっていた。手を当てた頬には痛みが走り、じんじんとした熱を帯びていた。



