私は部屋の中に逃げ込んで扉に鍵を掛けたけれど、すぐにドナルドは来てしまうだろう。

 何もかもがもう……すべては、時間の問題だった。

 すぐには追い掛けずゆっくりと近付いて来る余裕を見れば、私の部屋の鍵だって既に手に入れているはずだわ。

 ああ……とんでもないことに、なってしまった。それに、自分のことがとても情けなかった。やるべきことに背を向けて、変に感傷的になって、これまでの自分の頑張りを全て無駄にしてしまう。

 どうにか彼の侵入を防ぎたい私は扉の前に、自分の動かせそうな机を置いた。けれど、こんなのただの気休めでしかない。

 もうすぐ、ここにドナルドはやって来るだろう。そして、私を……。

 ああ……イーサン。

 自分勝手に切り捨てなければと思っていた、あの彼のことを思った。こんな風に都合の良い時だけ、私を助けて欲しいなんて……そんなこと。

 呆気なく鍵がかかっていたはずの扉は開き、机が倒れる大きな音がした。

 私の抵抗なんて、こんなものだ。それに、もう逃げ道はない。ドナルドは私が逃げられないから、余裕なのだもの。

 室内へと足を進めたドナルドは冷ややかな眼差しで、私を見つめた。追い詰めた獲物の価値を推し量るような、嫌な目だった。