これ以上、イーサンのことを好きになってしまえば……私は一時の感情でこれまでの全てを捨ててしまうくらいに、駄目な人間になってしまうのかもしれない。

「もう……会わないように、しないと……」

 私は右手を、顔の前に翳して思った。これは、何度も何度も、イーサンに触れた手だ。

 そうだ。私の役目は危険なダンジョンに挑む、彼らの安全を確保すること。それだけだったはずなのに、優しい彼は私のことを助けてくれた。

 夜毎にああして会いに来るのが、イーサンでなくて良いなら、もう手を離さないといけない。

 そうよ。私の方から。


◇◆◇


 パーティのリーダー的な存在にあるという魔法使いヴァレリオへの手紙は、彼らが滞在している『レンガ亭』へと届けた。

 この前にジョセフィンから、彼は最近のイーサンの様子を危惧していると聞いていたからだ。私本人がイーサンではない二人のどちらかに来て欲しいと言えば、それは叶えてくれるはずだ。

 イーサンだって私の気持ちを無視するような、そんな男性ではない。会わずに接触を抑えていれば、やがてお互いの気持ちも落ち着くはずだ。