「わ! すみません。オブライエン侯爵令嬢。名乗りもせず失礼をお詫びします。僕はヴァレリオ。ヴァレリオ・ミッチェルです」

 茶色の癖毛はのばしっぱなしで眼鏡を掛け黒いローブを纏った男性は、手に持っていた巻物をくるくると片付けつつ言った。

「俺はジョセフィン・クリフォード。レティシア様。どうぞ、よろしくお願いします」

 灰色の短い髪に赤い目という、この地方では珍しい色合いを持つ彼は私に片目を瞑った。彼は綺麗な顔をしていて、なんだか、軽い雰囲気的に女性の扱いに慣れているようだ。

「……イーサン・アイズナー」

 金色の髪に新緑の瞳を持ち凜々しい顔付きの彼は、名乗っただけだった。残る二人が彼に何かを言いたそうにしたけれど、話を先に進めたい私が先に口を開いた。

「その……ここに、三人が居た事情ですけれど……」

 そうなの。私はこれを知りたい。彼らの名前も聞いたのも、これを聞きたかったからよ。

「ええ。そのことなんですが……レティシア様には一度、目で見ていただいた方がわかりやすいと思います。もう一度、お手に触れてもよろしいですか?」

「え? ええ」

 片付けた巻物を小脇に抱えたヴァレリオは、不思議に思いつつも手を差し出した私に近付いて来た。スッとした仕草で手を取り、真面目な表情で言葉を発した。

「……ロード」

 先ほどのように虹色の光が走り、私は一度ぎゅっと目を閉じると、おそるおそる開けた。

 信じられないことに、一瞬のうちに、視点が変わっていた。