湯浴みを済ませて天蓋付きのベッドに横になり、夜会での出来事に興奮が醒めやらぬ自分と、これからの自分を考えれば浮かれた行動を慎むべきだと思う冷静な自分が居た。
……イーサンは、とても優しい。
けれど、私は彼と恋愛を楽しんでいる場合はなかった。
実際のところ、貴族としてオブライエン侯爵家を第一に考えるのならば、オルランド様のお誘いを受けるべきなのだ。
王族である彼には、誰も逆らえる者は居ない。彼が一言伝えれば叔父たちはすぐに荷物を纏めて、このオブライエン侯爵邸を出ていくことになるだろう。
そして、私の中にあるクラウディアへの友情は、すぐにでも切り捨ててしまうべきなのだ。
だって、私には彼女を裏切ったという事実はない。
両親を亡くして辛かった時からこれまでに彼女によくしてもらった事を思えば、誤解されて関係が切れてしまうことは悲しくはなってしまう。
だからと言って、これからただ一人遺された自分がすべき事を決して忘れてはいけない。
亡き父ともし、今話すことが出来るなら、きっと、私へそうしろと命じるはずだ。領地を持つ貴族であれば、感傷的な気持ちなど捨ててしまうべきなのだと。
ああ……私が両親も健在で、ただの貴族令嬢であったなら、イーサンと恋をすることは出来ただろうか。



