「最近……ある、不穏な噂を耳にしてね」

「え、ええ?」

 面白くなさそうなオルランド様に、私は嫌な予感がした。

「そうだ。レティシア嬢。君の友人である……ブラント伯爵令嬢について、なのだが……」

「は……はい」

 私はここで苦々しい表情を浮かべたオルランド様から、クラウディアの名前を聞くだなんて、まったく想像もして居なかった。

 だって、貴族令嬢は多く居て第三王子であるオルランド様の周囲には、それはそれは多く居るだろう。その中で名前を覚えてくれるということが、あまり考えられなかったのだ。

「なんでも、君が彼女を傷つけるために、僕にすり寄ったとか……そういった良くない噂が流れていると聞いたのだが」

 ……一瞬、胸が詰まった感覚がした。