聞き慣れない単語を耳にした私は不思議に思い首を傾げ、彼ら三人は揃って額に手を当てて天を仰いでいた。

「彼女の身体全体が、虹色に光ったって……そういうことだよな? 魔法の発動条件に書かれた現象、そのままだ」

「いや、それしかないだろう。彼女に触れて『セーブ』が発動することで、それは決定だ。魔導書にも任意で指定することは決して出来ず、完全に無作為(ランダム)で選ばれると、注意事項に書いてあったしな」

「うわ。そういうのも、ありなんだ! まあ、虫とか鳥とか、移動速度が速い何かでなくて、それはそれで助かったけど。そっかー、そうなのか~。セーブポイントが、まさかの、うら若き乙女。かつ、貴族令嬢なのか~」

 とても混乱しているらしい彼らは、仲間うちの親しさで口々に言い合い、取り残されている私は、ますます訳がわからなかった。

 ……もうこれ以上は、黙ったままで済ませることは出来ない。

「あの! ……その、お話し中に、ごめんなさい! 私の名前は、レティシア。前オブライエン侯爵シモーネの娘です。もしよろしければ、そちらの事情を教えていただいてもよろしいですか?」

 これまでに私たちは名乗っても居ないし、名乗られてもいない。本来ならば、これはあり得ないこと。

 彼らはおそらくは平民で私は貴族なのだから、声を掛けることが出来るのは、私の方からであるはずなのだ……いえ。そもそも城の中の洋服箪笥(クローゼット)の中に隠れて泣いていた私に、声も掛けるも何もないとはわかってはいるけれど。

 今、目の前に起こる光景は本当に理解しがたいのだから、その辺の事情を聞くしかない。

 私の言葉を聞いてから、彼らは自分たちにいろいろと言葉が足りていないと、ハッと気が付いたようだった。