ジョセフィンから話を聞いてから、私はイーサンと距離を取ろうと考えた。

 だって、もし彼と恋に落ちたとしても、私はイーサンと結婚するわけにはいかない。けれど、彼らが三人が見事SSランクへ昇級すれば、もう会うこともないだろう。

 夜毎、会いに来る彼に、二人の未来を考えればそうすべきと思っても、冷たく振る舞うことはできなかった。

 ……今の私はとても弱くて何の後ろ盾も持たなくて、同じ邸に住む叔父家族は私のことを自分たちのために利用することしか考えていない。

 そんな中で唯一の味方だったクラウディアは、今はもう連絡を取ることも出来ない。

 そんな中でのイーサンとの時間は、かけがえのないものだった。たとえ、未来がない関係だとしても、突き放して自ら手放すことは出来なかった。

 自分勝手で褒められるようなことではないことは、自分が一番にわかっていた。

 ただ、何かの偶然で出会っただけの彼に、私がこの身に受けるすべての不幸から救って欲しいだなんて、大それたことを……願えるはずもない。

 目に映る、バルコニーへ続く扉。いつもはあまり開かれることもない扉。

 壁掛け時計を見て時間を確認すれば、もうすぐ彼はやって来る。

 これは、永遠に続く関係ではない。もうすぐ、こんな夜も終わりを告げる。

 だから、もう少しだけ……。

 扉を叩く音が二回して、イーサンがやって来た。

「……こんばんは」

「こんばんは。イーサン」

 私は微笑んで、小雨に濡れた肩を手で払う彼を室内へ迎え入れた。