ジョセフィンは私がイーサンから好意を向けられているかもしれないと聞いて、単純に喜ぶだろうと思って居たらしい。

 私だって何の心配事もなければ……きっと嬉しくて彼のことを、特別に意識していたはずよ。

「私は幼い頃に、両親を亡くしていて……今はただの法定相続人なのです。だから、他の人たちのように、結婚前に恋を楽しんでいる時間はなくて……」

 若い内に恋はした方が良いとは聞くけれど、それは、時間に余裕のある人のすることだ。

 私は今の状況から抜け出すために、誰かと結婚する必要があった。それは、誰でも良いわけではない。

「……あの、すみません。レティシア様の詳しいご事情も知らず、失礼なことを」

 ジョセフィンはすまなさそうに言い、私は黙ったままで彼へ手を差し伸べた。ここに来た理由は知っているから、彼はそれを済ませる方が良いだろうと思ったのだ。

 私の意図を悟ったらしいジョセフィンは私の手を取り、一言呟くと虹色の光がふわっと室内に広がった。

 光が落ち着いた後、ジョセフィンはなんとも言えない表情でその場に佇んでいた。