「……こんばんは」

「あら」

 私は今晩も、イーサンが来るだろうと思っていた。だって、時は一度戻って足の怪我は、防げてしまったはずだから。

 けれど、私の目の前に居るのは、明るい調子のジョセフィンだった。

 『セーブ』を使えば明るい光が走ってしまうので、私は手招きをして彼を室内へと招き入れた。

「……すみません。ガッカリさせてしまいました?」

 彼の灰色髪は夜の明るい灯りの中で見ると、光を受けてキラキラときらめき銀色に見えた。彼は筋肉質でありながらひょろりと痩せていて、盗賊という職業を聞けばなるほどとうなずける。

「そんな! そんなことないわ」

「そうですか。なんだか、そんな風に思えたので……」

 揶揄うようなジョセフィンの質問に、私が慌てて手を振れば、彼は肩を竦めてから頷いた。

「その……イーサンは怪我は……大丈夫だったのよね?」

 そのはずよ。だって、昨日ヴァレリオが私の部屋にやって来たのは、彼の足の怪我を治すために一日分の時間を巻き戻す必要があったからなのだから。

「それは確かにそうなんですけど……イーサン、その怪我のことで、ヴァレリオを怒らせていまして……今夜は俺が代わりに、ここに来ました」

「……え? その、どういうこと?」

 ヴァレリオからは本人に聞いてくれと言われたし、イーサンは足を折ってしまったからとしか言わなかった。