セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

 ……けれど、こういった彼らの詳しい事情を私が聞いた時に思ったのは、まだ『セーブポイント』を使用しないといけないくらいに、危険な場所には行かないのではないかということだ。

 つまりは、まだイーサンは私の所に来る必要はないのではないかと……もしかしたら。

 私は頭に浮かんだ浮かれた幻想を振り払うように、頭を横に振った。いけないいけない。何を考えているのかしら。

 イーサンは『あの時、何故私が泣いていたか』を知りたがっていたし……彼は優しいから気になったのだわ。

「大丈夫かしら」

 他に誰も居ない部屋の中で、私はぽつりと一言呟いた。

 カーテンの隙間から外を覗けば真っ暗で雨が降りそうな空模様で、もしかしたら、イーサンがこちらに向かっている間に、降られてしまうかもしれない。

 そして、雨音がし始めたと思ってから、雨足が高まるまでそれほど間はなかった。

 そんな中でバルコニーからガタガタと音がしたので、私は慌ててバルコニーへと続く扉へと駆け寄った。

「あ……ヴァレリオ? なの?」