……今のような孤立無援状態にある私にとって、とても嬉しい言葉だったから。

「……ありがとう。イーサン」

「いえいえ。こうして美しいご令嬢と踊って貰えるのですから、俺も役得です。気にしないでください」

 踊っていた時、彼の背中の向こう。そこに、私を憎々しげな形相で睨み付けるクラウディアの顔が見えた。

 ……驚いた。どうして。今、踊っているイーサンは、彼女の慕うオルランド様ではないのに。

「レティシア様。どうかなさいましたか?」

 私の顔色が変わったことに気が付いたのか、イーサンは気遣わしげな声で聞いた。

「……ごめんなさい。なんでもないわ」

「そうですか」

 イーサンは踊りながら周囲を気にしたようだけれど、クラウディアの顔を知っているわけではないので、私が何に驚いたかはわからないだろう。

 ……どうしてかしら。クラウディアとは、仲が良いと思っていた。

 そう思っていたのは……もしかしたら、私だけだったのかもしれないけれど。

「そろそろ帰りますか?」