さっきまで、絶望的な気分でここに居たのに……誰かにダンスに誘われるなんて、思わなくて。
「イーサン。けど……その」
私は好奇の視線を向けている、周囲を窺った。決してだれろも目が合うことはないけれど、彼らは興味津々で噂を聞いたばかりの私へ、目立つ男性が声を掛けている様子を見ているだろう。
イーサンが誰であるのかと、口々に囁き合っているはずだ。
「ああ。レティシア様。噂は違う噂でかき消すのが、一番良いですよ。俺はこのヘイスター王国で何を言われようが構いませんし、どうぞご安心して名もなき盾としてお使いください。俺たちとて、レティシア様に無理を言って、とんでもない役目を引き受けていただいたという自覚はありますから」
「……ありがとう。イーサン」
そして、イーサンは重ねた私の手を軽く引いて、ダンスホールへと出た。まるで滑るようなリードで、何人かしか踊ったことのない私でもすぐにわかるくらいに巧(うま)い。
「緊張しています? ……ご友人の妙な誤解が解けるまで、こういった場には俺が一緒に出ますよ。レティシア様が、嫌でなければ」
「イーサン。けど……その」
私は好奇の視線を向けている、周囲を窺った。決してだれろも目が合うことはないけれど、彼らは興味津々で噂を聞いたばかりの私へ、目立つ男性が声を掛けている様子を見ているだろう。
イーサンが誰であるのかと、口々に囁き合っているはずだ。
「ああ。レティシア様。噂は違う噂でかき消すのが、一番良いですよ。俺はこのヘイスター王国で何を言われようが構いませんし、どうぞご安心して名もなき盾としてお使いください。俺たちとて、レティシア様に無理を言って、とんでもない役目を引き受けていただいたという自覚はありますから」
「……ありがとう。イーサン」
そして、イーサンは重ねた私の手を軽く引いて、ダンスホールへと出た。まるで滑るようなリードで、何人かしか踊ったことのない私でもすぐにわかるくらいに巧(うま)い。
「緊張しています? ……ご友人の妙な誤解が解けるまで、こういった場には俺が一緒に出ますよ。レティシア様が、嫌でなければ」



