冒険者の彼とは全く違う……上品な出で立ちで貴族であると言われれば、納得してしまう姿だった。

「驚かれましたか」

 微笑んだ彼は私の手を取って、手袋に包まれた右手に唇を付ける振りをした。これは、貴族としての挨拶で、彼は冒険者で……平民のはずで、私はそう思って居たのに、どうして?

「ええ。とっても! 驚いたわ……どうして、貴方がここへ?」

「ええ。俺は王に仕える騎士だと、言ったでしょう。そういった訳で、ヘイスター王国にも色々と繋がりが」

 イーサンは確かに自らの職業は、聖騎士だと言っていた。私もそう聞いていたけれど、騎士ならば冒険者であるのはおかしいという矛盾が生じてしまう。

「王に仕える騎士なのに、冒険者をしているの……?」

 騎士と言えば騎士団に所属して、王を守ったり国の治安を守ったり、戦場で戦ったり。そういった仕事であるはずなのに、彼は冒険者として真逆のことをしているように思う。

「そうです。俺は以前に、王にとても褒められたことがありまして……それ以来、国に何か危機が起こらない限りは、自由に好きにさせてもらっています」